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英語教育を「国際競争力」「AIの進化に合わせた方法論」「日本のローカル事情」の3軸から見つめるブログ

Find my Tokyo?

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東京メトロで通勤していますが、石原さとみさんが東京の魅力を発見する、"Find my Tokyo." はいつも楽しみにしています。「今回はあの街が取り上げられているんだ〜」と納得してみたり意外だったり。東京は本当に懐の深い土地なんだなと思います。

でも、"Find my Tokyo." という英語は?ですね。すでに英語の先生方や学習者の方々がブログなどで書かれているように、少し不自然です。どうすれば自然になるのか考えてみましょう。

英語は日本語に比べて、文法の融通があまりきかない言葉です。"Find ~" まで言ったところで、問答無用で「それは命令文なので主語は You」となってしまいます。日本人としては「固いこと言わずに」と思いますが、"Find" で文を始めるならば、英語としては "Find your Tokyo" (あなたの東京をみつけよう!)というのが正しい文です。でも、石原さとみさん演じるこのプロモーションの意図は、「私にとっての東京の魅力を見つける毎日〜」というニュアンスですね。ではどうすればいいでしょうか?

一つの解決策は、動詞の原形 "Find" を使わず、かわりに過去形の "Found" を使うことです。英語では自分の過去の行動を振り返る際に、主語を省略して過去形を使うことがよくあるので、このコピーを、"Found my Tokyo." とすれば、"I found my Tokyo" の "I" が省略された感じで、英語としては自然になります。意味としては「私にとっての東京の魅力、ついに見つけた!」という感じです。しかし、東京オリンピックパラリンピックに向けて、過去形ではなく、現在進行形で発信していきたいというのが東京メトロのねらいだと思います。

 a. Find my Tokyo. → 英語として不自然

 b. Found my Tokyo. → 英語としては自然になるが、意味が合わない

現在進行形と書いたところなので、では "Find" を "Finding" としてはどうでしょうか?実はこれが一番ねらっている意味に近くなります。

 c. Finding my Tokyo

英語としては、a, b が文法的に「文」であるのに対して、c は「文の一部」になります。文法用語を使うならば「付帯状況を表す従属節」ということになり、その後に続く部分を修飾します。「私の東京を発見しながら〜」という意味になり、探しながら何をするのか(意味の主要部分)は含まれない表現なので、その部分は受け手にゆだねる感じになります。東京の魅力を発見しながら、『オリ・パラで来日する外国人をおもてなししたい』『今まで知らなかった東京を探索してみよう』というポジティブな意味を発信できるように思います。

東京メトロのみなさん、まだ遅くないですよ。外国人アスリートに「この英語不自然じゃない?」と言われる前に、しれっとコピーを変えてしまいましょう。Find → Finding、たった3文字の追加で日本人の英語に対する評価アップです!