英語教育Cubed

英語教育を「国際競争力」「AIの進化に合わせた方法論」「日本のローカル事情」の3軸から見つめるブログ

『英語教育Cubed』へ出発!

新学習指導要領

今年からの数年で英語に関わる部分の新学習指導要領が次々と施行され、小学校でも英語が教科としてスタートします。対応する形で中学入試の科目に英語が追加され、高校以降の入試内容も変化と、学ぶ側にとっても教える側にとっても、忙しい数年間になりそうです。さらに、「原則として英語の授業は All English で行う」とか、大学入学共通テストでは問題文が英語になるとか、変化が目白押しです。
 とはいっても、英語の先生の能力が急にレベルアップするわけでも、学校のクラス人数が急に半分になるわけでもないので、掲げる目標をクリアしていける学校がどれだけあるのか、心配になってしまいます。

 

うすうす気付いていること

生徒も親もうすうす、というかかなりはっきり気付いていると思うことがあります。日本ではほんの一握りの特別な学校を除いて、学習指導要領が改訂される時に掲げられるような立派な目的や目標を「手段」「結果」共に達成することは非常に難しいです。そして多くの場合、特に公立学校では、「手段目標」を達成することが優先され、結果が伴わないのです。

例えば、「英語の授業は英語で、All English で行いましょう!」というような、鳴り物入りで登場した新機軸は崩しがたいものがあります。多くの先生が、付け焼き刃的に「授業で使える英語の指示文」をまる覚えしたり、教科書の指導書から「難しい用語を使わずに英語で文法事項を説明する方法」を仕入れてきたりした授業が展開されるのです。お上が決めた方針に正面から逆らうことは、公立学校ではやはり難しいのが現実です。その感じではなかなか結果は出ません。しかし、高校も大学も生徒学生の質は保ちたいので、入試問題が実情に合わせて簡単になることはありません。ではどうやって帳尻が合ってくるのでしょうか?

 

塾の話

日本には正規の学校以外に、同じかそれ以上の歴史のある「私塾」という文化があります。なんといっても学習指導要領の影響外にあるので、ルールにしばられず、学ぶ側のニーズに合わせてなんでも組み込める特徴があります(あえて利点とはいいません)。私も学校の教師になる前に塾で5年間ほど教えていたので、そのあたりの事情はよく分かっています。

上の話に戻りますが、学校が「手段目標」の達成がやっとという状況で、「結果目標」を塾が担ってしまう現実が日本にはあります。学校ができるところまで努力して、その中で達成できないことや取りこぼしてしまった生徒は、成績優秀な側も不振な側も、塾が引き受けてしまうのですね。一大産業として成り立っていることからも、この構造の強固さが分かります。

 

名物先生の「驚愕の一言」!

学生時代に、当時「日本一授業がうまい」と言われた有名な英語の先生と話していて唖然としたことがあります。その先生いわく、「学校の授業では、教育学的に研究された理想的な指導法を展開すればいい。それで十分に身につかない部分は、生徒は塾で補ってくるから大丈夫だよ」というのです。現実的なコメントではありますが、この図式の上にあぐらをかいていては、学習指導要領をどれほど理想的なものに変えても、塾が担う部分が変化、増大していくばかりではないでしょうか。

経済的な理由で塾に通えなかったり、あるいはそもそも塾があまりない地方の生徒は、最初からハンデを背負ってしまうことになります。別の視点で、小学生〜高校生の時期は、将来に向けて、教科内容のみならず幅広い物事に興味関心を持ってもらいたい年齢です。あまり塾通いばかりに終始させたくありません。

 

『英語教育Cubed』へ

次回より、ブログタイトルを『英語教育Cubed』に変更します。"Cubed"とは「立方した、3乗した」の意味で、対象を3次元軸で見つめたいという意図からです。日本の英語教育・学習は、「国際競争力」「科学技術の進化にともなう指導法・学習法の変化」「日本独特の文化的特性(ここで論じた塾文化など)」という異なる三軸、三つの変数を眺めながら論じるのがいいと考えるからです。いろいろな意味合いで、「英語教育2.0」「英語教育3.0」といった枠組みを立てておられる先生方がおられます。私はあえてそういったジェネレーションによる分類ではなく、3次元軸的アプローチで英語教育のこれからを考えていきたいと思います。