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和製英語から見えてくるもの 〜その1〜

英語教育関連の記事を検索していると、和製英語を取り上げたものは多いですね。日本語に英語「的」な表現が浸透していること、また日本人のそれらへの関心の高さも感じられます。よくある和製英語と対応する本来の英語表現については、下に紹介する他サイトが詳しいです。ここではその分類や、そこから見えてくる日本人の言葉への態度について考えてみます。

 

和製英語まとめサイト

 日本語サイトの中では読みやすく、正しい表現を示すだけではなく、解説が分かりやすいです。

business-textbooks.com

英語ネイティブの翻訳家の方がまとめたリストです。添えられている英語のコメントが面白いです。
一番有名で悪名高い和製英語は "mansion" とのこと。

www.at-it-translator.com

ウィキペディア英語版の説明。Wasei-eigo とローマ字タイトルです。日本で使われている和製英語は成立過程も様々で、英語でうまく表現できないのですね。

en.wikipedia.org

 

和製英語」はその成立過程でいくつかのタイプに分かれます。また、日本人的には「それは和製英語とは言わないのでは…」と思うものでも、英語ネイティブにとっては「和製英語」と思えるものもあったりします。それでは成立過程別に和製英語の特徴を見てみましょう:

 

【英語を省略、ないし組み合わせた表現】

apart(アパート)
集合住宅の「アパート」は、apartment house ないし apartment です。apart という語は「離れている」の意味で、"Apart from that, ~"(その点は別として)などの定形表現としてビジネスの場面でもよく使われます。過度に省略してしまったパターン。

super(スーパー)
食料品や日用品を買う「スーパー」は、supermarket です。上と同じく省略しすぎパターンです。食料品のみを扱っていて規模が小さい場合は、grocery store とも言います。

☆上の2例は、長い語をあまり好まない日本人が、もとの英語表現のはじめの部分を切り取ってできた和製英語ですね。そして実は、これらを日本語で言おうとすると、「集合住宅」「食料品店」と発音する音節の数ではより長くなります。和製英語が一番手っ取り早いコミュニケーション手段になっていると言えますね。

book cover(ブックカバー)
少し毛色が違います。本の本体が汚れないようにかけるカバーを「ブックカバー」と言いますが、英語では book jacket です。しかし、英語圏では本を買った時に日本のようにブックカバーをかける習慣はあまり一般的ではありません。
 英語では、本が話題となっている時に cover と言えば、本の「表紙(裏表紙も含む)」のことです。なので "I like this book cover!" は、その本の「表紙のデザインが好き」というような意味に受け取られます。また、本の要点を拾い読みするのではなく、最初から最後まで「通読」することを、"(read the book) from cover to cover"(表紙から裏表紙まで全部の意味)と言います。

☆この例では book cover, book jacket の長さはさほど違わないので、日本人が「覆うもの=cover」という語感を自然に感じたのか、あるいは book という「物」に対して、「人」が着ることの多い jacket を合わせる組み合わせを不自然に感じたのか、そのあたりが理由になりそうですね。また、book cover を日本語で言おうとすると、「本の汚れ防止の覆い」ですか?うまく日本語になりません。実は「同じ内容を言い表す適切な日本語がそもそも存在しない」和製英語も多いようです。

   *** その2へ続く ***