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Open と close の話〜英語の非対称性〜

コロナ騒動ですっかり在宅勤務の毎日ですが、週に一度の出勤日に街を歩くと、変わらず営業している店がある一方、閉店を余儀なくされている店も多いようです。この「開店」と「閉店」、英語で看板を出すとすればどうなりますか?二通り見かけますね〜

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正しくは「開店」「営業中」は "open"、「閉店」「準備中」は "closed" となります。右側の写真の "close" 看板は、残念ながら間違いです。単語の意味を見てみます:

 open 【動詞】開ける 【形容詞】開いた
 close 【動詞】閉じる 【形容詞】(距離が)近い、そばにいる

動詞の open-close は対になる表現ですが、「開店」「閉店」は店の状態を示すものなので、動詞ではなく形容詞で表現する対象です。形容詞では、上のように open-close の意味は対になりません。「閉じた」の意味にするには、close を過去分詞形にして、closed とします。検索すると、「誰かによって店が『閉じられた』(The shop is closed.)のだから、受動態を意味する過去分詞を使う」という説明が多いようです。実際にはそう考えるよりも、closed がもともと「閉じた」を意味する形容詞であると考える方がいいと思います。

例えば、「面白い」は interesting だと中1で習いますが、これを「動詞 interest が能動の意味を持つから、現在分詞形の interesting が『興味を持たせる=面白い』の意味になる」と教えることはありませんよね。今回の例でも、単純に open-closed と覚えておけばいいだけと考えます。

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 英語が好きな方のために少し深掘りしてみましょう。英語では、最初にある概念を出して、その追概念を表す際に「過去分詞形」が登場することが多いです。

 original【形】最初の、元の
 <反対語> revised, amended【形】変更・改訂済みの、補足済みの

 new【形】新品の
 <反対語> used, pre-owned【形】中古の、以前に所有者のいる
 (※new が「新しい」の意味の場合は、反対語は old「古い」です) 

 natural【形】自然な、手を加えていない
 <反対語> processed【形】加工済みの、手を加えた

 

この、「過去分詞を使う時の感覚」をつかめるかどうかは、英語のレベルを上げていく中でとても大切なポイントだと思います。上の例でいくと、「加工済みチーズ」は英語では processed cheese ですが、日本では「プロセスチーズ」となり、過去分詞の -ed が落ちてしまっていますね。一方、used は、すでに「ユーズド」としてカタカナ語としても定着しているように思います。どういう場合に -ed が日本語化できるのか、面白そうなトピックです。

実は本記事に関連して、語彙レベルではなく文法レベルで「非対称」な表現を取り上げようと思っていたのですが、それだけで一記事になってしまうボリュームがあるので、回を改めたいと思います。