フィギュアスケートのジャンプと英語学習
今回のテーマは、「フィギュアスケートのジャンプと英語学習」です。謎なテーマですね。これまでは英語学習のうち、文法に何度か注目したので、今度はリスニング&スピーキングを考えてみたいと思います。
ところで皆さんは、テレビでフィギュアスケート競技を観る時、ジャンプの種類や回転数が分かりますか?解説者は選手がジャンプを跳ぶと、間髪入れず「トリプルアクセル、決まった!」とか「今のはトリプルトウループでしたね〜」とコメントしていますが、皆さん観てわかりますか?実際にはフィギュアスケートのジャンプには6種類あり、それぞれ踏み切る場所や進行方向の別があり、跳ぶ前からどの種類のジャンプになるかはほぼ分かるそうです。しかしそれでも、回転数となるとほとんどの人はお手上げなのではないでしょうか。
「技術審判はなぜジャンプをリアルタイムで見分けることができるのか?」これがお題です。
フィギュアスケートにあまり興味がない方もいらっしゃると思うので、もう一例。クラシック音楽です。次の動画は、ヴィヴァルディ『四季』より『春』です。よく知られている出だしのメロディではなく、1:55〜2:14に出てくるヴァイオリン・ソロの部分を聴いてみてください。
「この速いソロはどういう音符を弾いているのか、聴き分けられるか?」これが上と同じお題です。
私はフィギュアスケートを練習したことはありませんので、ジャンプの種類や回転数は観ていても全く分かりません。一方、音楽には聴く側としても演奏する側としても、またビジネスでも関わってきたので、上の『四季』のソロは音符が細かく聞こえます。この違いは何でしょうか?それは人間の認知特性、「自分でできることは見て・聞いて分かる」、逆に「見る・聞くだけでは細部は分かるようにならない」ということです。
フィギュアスケートの技術審判は、通常世界大会レベルの競技経験者が就任します。テレビ解説も通常、引退した選手がなさっていますよね。音楽の例でも、自分で音楽を演奏しない人は、たとえクラシック音楽に詳しい人でも、上の『四季』の3連符進行を細かく聞き分けるのは難しいと思います。
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本題の英語学習に話題を戻すと、テスト実施や採点の客観性の観点からも、まだまだ Receptive channel(受身技能=聞く・読む)のみの試験が大半です。センター試験もTOEIC L&R も、リスニング試験はありますが、スピーキング試験はありません。自然と、「たくさん聞いてリスニング力を鍛えよう!」となるのですが、たくさん聞き流しても、集中してたくさん聞いても、実のところリスニング力があまり伸びないのはみなさん何となく分かってきているところです。
海外留学したり、仕事で英語を使ったりするようになると、自然と「聞く」力が付いてくるのは、実は「話す」ことをするようになるからです。上のフィギュアスケートと音楽の例と同じく、「自分で話せることは聞いてもよく分かる」なのです。この意味で、最近流行りの「シャドーイング」重視の英語勉強法は、外れてはいないと言えます。赤ちゃんが母語を習得する過程でも、まずは母親の言葉をまねることから始め、意味は理解していなくても、「自分で言えた言葉」は聞き取れるようになっていきます。
その意味では、「英語を話す練習をする前に、十分なインプットを」という発想ではなく、「英語の勉強はインプットとアウトプットを均等に」、あるいはさらに、「インプットしたい内容を先にアウトプットしてみる」くらいの感覚でちょうどいいと思います。この観点から、昔から生徒によく言っていたことがあります。
「英語は常に感情を込めて音読して、自分がアウトプットしながら勉強するのがいいから、図書館では勉強できないよ。英語は自宅で声を出して勉強しよう」