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英語教育を「国際競争力」「AIの進化に合わせた方法論」「日本のローカル事情」の3軸から見つめるブログ

驚愕の英語面接!

以前コンサル系企業の海外部署に勤めていた頃、中途採用試験で英語面接を担当する機会がありました。志望動機、これまでの仕事についてなど、一般的な内容は同席する役員が日本語でたずね、最後に私が英語面接をして「生の英語力を測ろう」という試みでした。なんと志願者には事前通知なし!いきなり当日その場で「英語面接やりますよ」ということにしたのです。想定問答を英語で準備してくることもできず、実にいい感じでみなさんの生の英語力を見せてもらえたように思います。今でもはっきり覚えているお二人を紹介します。

最初は履歴書に「イギリス在住経験7年」と書いてあり、自信たっぷりに面接前半を終えた30代男性志願者。はっきりとした受け答えは自信に満ちており、英語もさぞ上手なんだろう、自分は海外在住1年なので、きっと負けているだろう、と思って英語面接をスタートしました。

"Could you briefly explain what made you interested in working with us?"

(弊社海外部門を志願された理由を簡単にお話しいただけますか?)

面接前半ですでに聞いた内容なので、同じ内容が今度は英語で返ってくるな、と思っていると、驚きの反応が…

「すみません…英語忘れました」

おいっ、あなたが入ろうとしているのは海外部署で、日本にいる時も海外へ出た時も、基本全て英語で商談を進めるんだぞっ、忘れたなら応募してくるな!と言うまでもなく、面接は終了となり、彼はとぼとぼと帰っていきました。情けないのか気の毒なのかわからず、同席していた上司としばし無言の時間を過ごしたのを覚えています。実際は、過去に留学や在住で英語をそこそこ話していても、いわゆる「サバイバル・イングリッシュ」にとどまっていて、仕事での使用には耐えない人はそこそこいるのではないかと思った出来事でした。

 

次は正反対の事例です。自分より5歳ほど年上の女性志願者で、日本語でのやりとりの時からおちついた雰囲気で話す人でした。英語で面接をすると伝えても動じず、志願理由や興味のある業務内容について分かりやすく説明してくれました。途中、英語試験のスコアの話になると、彼女は自慢するでもなく、さらっとこう言いました。

TOEICも受けましたが、2回連続990点満点とれましたし〜」(もちろん英語で)

その頃私はTOEIC受験経験がなく、そう言われてすっかりひるんでしまったのを覚えています。自分がその志願者に試されている気がしたのです。これは巻き返しが必要!

その方はブラジル在住経験がおありとのことだったので、いい質問を思いつきました。ブラジルの公用語ポルトガル語ですが、ポルトガル語以外への翻訳が難しいとされる語、概念である "saudade"(サウダージ)について、英語で説明してもらおう!と考えたのです。彼女の説明は正確には覚えていませんが、次のような内容だったように思います。

"Saudade" is a mixed feeling of sadness, loneliness and positive acceptance of the reality...

詳しい説明は上の Wikipedia の記事を見ていただくとして、こういった抽象的な内容についてもきちんと英語で説明できる彼女の語学力は確かなものでした。ぜひとも我が社に、という話になったのですが、こちらの提示できる年収が先方の求めていたものと合わず、それ以上のご縁がなかったのがとても残念でした。雰囲気としては、企業の海外部署というより、フリーランスで通訳などなさるのが向いている印象を受けた方でした。

英語面接、自分の英語力をさらにみがいた上で、またやってみたいですね。もちろん抜き打ちで!